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「兄さん………やっと、戻ってきてくれたね」
沖田くんの声は、
今まで聞いたこともないような優しい声で
「………兄さん………?」
そこに、
ずっと感じていた憎しみや、切なさはなくなっていて
顔半分近く火傷を負ってしまった薫を、
愛しそうに見つめていた。
「この人は、俺が生まれるまえに俺の父さんと、速鷹婦人との間にできた
望まれない子供だったんだ」
_____あ
だから、
沖田くんを、どこかで見たことあるような気がしていたんだ。
以前こっそり見た 整形を受ける前の薫の写真と
「沖田君が生まれる前に、薫は速鷹家に引き取られたはずだよね?
どうしてその存在を?」
沖田君の顔が とても似ていたんだ………。
「父さんの愛人の子供を引き取り育てていた母さんは、とても苦しんでいたから」
思えば、
私は
沖田くんの事、ほとんど何も知らないで、
ただ、
潤平に恋をする異質な男の子とか、
その潤平の恋人だった私と薫の関係を気に入らない、不可解で何をしでかすか分からない不気味な存在として、
怖がるばかりだったような気がする。
「あなたのお母さんは、薫を憎んでいたの?」
自分の夫が過ちを犯して出来た子供を育てた沖田くんのお母さんは
どういう女性だったんだろう?
「逆だよ」
その屈強した生活の中で 母性は目覚めたんだろうか?
「赤ちゃんの頃から育てていた母さんは、
兄さんをとても愛していたんだ」
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