濡れた制服を乾かすのは

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「HISEIDOの情報管理のセキュリティをしていた父さんの子供を妊娠してしまった速鷹婦人は、 夫の子して兄さんを出産したんだ」 薫の弟だという、沖田くん まるで芸能人のような容姿で、 初めて見た時からとても目立っていた。 「………ばれちゃったの?」 「そう、生まれて直ぐに遺伝子検査をして、兄さんが自分の子供じゃないとわかった速鷹氏は、 怒りのまま、兄さんを俺の父さんのところへ捨てるように置いていったらしい」 整形を受ける前から、生まれながらに美しかった薫の弟なら納得できる。 「薫のお母さんは、どうして離婚しなかったんだろ?」 「さぁ、速鷹家の地位とお金は、子供より魅力的だったんじゃないの?」 「………………………」 きっと、沖田くんのお父さんも ほんの火遊びのつもりだったんだろうな。 沖田くんのお母さんと離婚にいたらなかったのは、 そこに夫婦愛がまだあったからなのか……… 「だけど、速鷹自身の生殖機能に問題があると分かった数年後に あの夫婦が再び訪れて、 自分の実の子供のように育てていた母さんから、 兄さんを奪っていたんだ」 「………………………」 自己中極まりない、速鷹夫 婦。 その中で育てられた薫は、 幸せだったんだろうか? 「俺が生まれても、 自身が病気で亡くなるまで、母さんはずっと兄さんの事を気にかけていた」 静かに眠る薫の顔を見て、 大人に翻弄された、この人の運命をとても哀れに感じてしまう。 「そんな母さんの事も忘れて、 速鷹家の人間として、表面化しないのをいいことに、 モデル達と浮き名を流す兄さんを、 俺は、ずっと嫌いだった」
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