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「絆創膏だね、もしかして貼ったばっかりじゃない?」
「は、はい……っ」
「剥がしていい?
っていうか剥がすね」
なんで?!なんでー?!
何を考えているのか全く分からない篠宮先輩に気圧されて、俺はただ、絆創膏が剥がされる感覚に怯えるしかなかった。
怖くて怖くて背筋が震えそうなのに、恥ずかしくて体温が上がった気がする。
もうやだ、意味が分からん!
誰か助けてくれ……!
「やっぱりキスマだ」
「…………っ」
トントン、と篠宮先輩の人差し指がその場所を軽く叩く。
見られてる。
その事実を思い知らされて。
煽られていく羞恥心に堪えられずに、俺は俯いてぎゅっと目を瞑った。
「菅井くん、彼女いんの?
もしかして彼氏かなー?」
「い、……いな、い、です」
「いないの?
じゃあ、セフレかな」
「セッ……?!」
思わず耳を疑った。
せ、セフレなんていてたまるか……!!
慌てて首を横に振って、全身全霊で否定する。
「ふーん……?
まぁ何にしろ、こんなとこに痕つけるなんて情熱的だね」
情熱的ってなんだよ、情熱的って!
こんなの轟先輩のセクハラだし、好きでつけられたわけじゃねーし!
悪ふざけっていうか嫌がらせっていうか……っ!
と、口にしようかと思ったのに。
「しかもさぁ……なーんか、轟のクソヤローの甘ったるいにおいがする気がすんだけど」
轟先輩の名前に反射的に顔を上げれば、篠宮先輩はすん、と一度鼻を鳴らして「当たってる?」と薄く笑った。
目の奥が全く笑ってないのが怖いんだけど。
あ、当たってます。
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