2 目的

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でも後になってから聞いた方が失礼だろうしな。 しょうがないから今聞いちゃおう。 そう思って「あの、」と声を出したその時。 聞き覚えのある軽快な音楽が部屋の中に鳴り響いて、俺の声はかき消された。 「うおっ、悪い、俺のだ」 電話がかかってきたらしく、彼はポケットからスマホを取り出して電話に出た。 なんというタイミング。 うん、今日はなかなか運が悪いぞ。 まぁいいや、電話が終わってからそれとなく聞こう。 「もしもし? あー、ないッス……いや、だから俺は持ってないッスよ。 寮まで持ってきた記憶ない…………って、それを早く言ってくれません?」 電話の向こう側にいる人、口調からして先輩かな? 何やら揉めているらしい。 っていうか、さっきの曲。 タイトルは忘れたけど、最近流行りのボカロ曲じゃん。 ボカロ自体はあんまり詳しくない俺でも、月別再生回数ランキングで上位に食い込んでたからあの曲はちょっと知ってる。 姉貴もよく聞いてたな、とどうでもいいことを考えつつ電話が終わるタイミングを見計らう。 「とりあえずそっち戻りますから、はい。 話はそれから……はい、……は? いやいや、ちょっ、勝手に何して、先輩っ!?」 「もしもーし?!」と声を荒げる同室人さん。 もしかしなくとも、これは電話切られたっぽいな。 今なら名前聞いてもいいかなー、と思ったのも束の間。 本棚から出した本や辞書もそのままに、同室人さんはバタバタと部屋の出口へと向かった。 「俺校舎戻るからっ! ごめん、本とか邪魔だったら適当にどかしといて!」 「えっ、うん?!」 「じゃ!」 見てるこっちが不安になるくらい焦りつつ靴を履き替えて、同室人さんは部屋を出ていってしまった。 少し遅れて、勢いよくドアが閉まる轟音が響く。 ……結局名前聞けなかったじゃねーか。
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