2 目的

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一方、その頃。 学園敷地内、某所。 「なんとしても菅井くんに美術部に入ってもらう!」 「あー……、噂の転校生くんですか?」 「おう!」 上機嫌そうに笑みを浮かべて答える赤髪の男、篠宮。 そして、篠宮の話を心底つまらなそうに聞く小柄な少年。 ライトブラウンの髪がさらさらと揺れる。 「てっちゃんと会いに行ってみてさ、なんか気に入ったんだよねー!」 「へぇ」 「……お前ホンットに愛想ないな。 先輩の話だぞ、聞けよ」 「はぁい」 「なんてやる気ない返事なの? 愛斗くーん?ケンカ売ってる?」 「ええ、税別1万円で」 「高ぇな、絶対買わねぇ」 くだらない言い合いをする2人の傍らに、大量のピアスを身につけた男、黒岡。 その手にあるシルバーのピアスを眺めながら、自らの耳をしきりに気にしているようだった。 「ん?てっちゃんどした?」 「いや……次はどこに開けようかと思って」 「ピアス穴? てっちゃんは耳はもう結構開いてるしな……舌とか」 「もう開いてる」 「マジか」 「あ、ヘソとかどうですか?」 少年の提言に一瞬考えたような素振りを見せて、黒岡は「そうだな」と頷いた。 「……ってか思いっきり話逸れたんだけど。 菅井くんの話をしてるんだけどなー、俺は。 2人とも、ちょっと人の話聞こうか」 「嫌です」 「俺は最初から聞いてる」
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