2 目的

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「菅井くんが入部すれば、美術部の部員数はついに20人になる! そうすれば、生徒会役員の野郎共も美術部を認めるに違いない。 そうだろ?」 篠宮の問いかけに黒岡はしっかりと頷いてみせたが、少年は不満げにその双眸を細めた。 「……半分以上は幽霊部員じゃないですか……、まともに“ここ”に来てる人数を考えてくださいよ。 俺と篠宮先輩と黒岡先輩、あとは泉先輩のたった4人ですよ? 本来の部活設立の基準人数すら下回ってます」 「そこに菅井くんが加われば5人だ、基準人数ピッタリだろ」 「なんでその転校生が入部して、しかも幽霊部員にならないこと前提なんですか……」 呆れ返った少年の溜め息を掻き消すように、その部屋の入り口であるドアが開かれた。 突然の来訪者に心なしか強張った3人の視線が集まる。 「3人してなにガン見してんだよ……俺入っちゃダメだった?」 現れたのは、清潔感のある黒髪と眼鏡の奥のつり目がちな瞳が印象的な男子。 彼がよく見知った仲間であることに気付き、3人の表情はすぐさま柔らかくなった。 「泉先輩! 全然ダメじゃないですよ」 「一瞬誰かと思ったわ……! ってか遅ぇよお前、遅刻だ遅刻」 「委員会の仕事だって言っただろ。 ちょっとこっちに顔出しに来ただけだし、この後すぐ委員会に戻るから」 「え゙っ、戻っちゃうんですか……この真っ赤なバカを俺に残して……」 「悪い、任せた」 「俺の超クールな赤髪の良さが分からんお前らの悪口は華麗にスルーしてやろう……ということで! よく聞け野郎共、今から手っ取り早く作戦会議だ!」 「いえーい」 「最後まで聞くまで委員会にも行かせねぇからな!」 何を考えているのか、はたまた何も考えていないのか。 一人だけ異様にテンションの高い篠宮と、それに合わせるように拍手で盛り上がりを演出する黒岡。 しかし、その表情は真顔である。 その他の2人は心の中で『また始まった』と呟き、これから始まる厄介な事件を予感せずにはいられなかった。  * * *
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