Colorful Darling

３ 見学

部活見学に行こうと決めたものの、俺はまだ寮の部屋で右往左往している。

数分前とは違うのは服装だけだ。
俺の身を包んでいるのは真っ黒な学ラン、ではなくこの高校の制服であるブレザー。

学ランで校内をうろつくのは目立って嫌だし、橋本副会長から制服一式を受け取ってきたからちゃちゃっと着替えた。

真っ白な指定のワイシャツの上に羽織った紺色のブレザー。
落ち着いた青色ベースでチェック柄の入ったズボン。

ブレザーの袖やポケットなどのさりげない場所にゴールドのラインが入ってるのが金持ちくさいデザインな気がするのは、俺が一般庶民だからか。

そして、ズボンと同系色でストライプ柄のネクタイ。

……ネクタイ。

…………ネクタイ結べねぇ……。

そりゃあ中学も前の高校も学ランだし？
ネクタイなんて触る機会は一切なかった。

でもなんか、こう、ちゃちゃっと結べるんじゃないかなーと思ってた。

まぁ普通に無理だったわ……結び目の構造が分からない。
色々とググってもややこしかった。

いや、結ばなくてもいいんだけど！
夏だし、夏服だしね！

夏はブレザー脱いでノーネクタイでも良いって説明されたんだけど。

それでも俺はネクタイを締めたい。

ネクタイがないと首元が……不自然に貼られた絆創膏が見える気がして落ち着かないから。

うおおぉ……気になる、めっちゃ気になる。隠したい。

鏡で確認してみても、見えるような見えないようなチラリズム。

別に絆創膏が貼ってあってもおかしいことではないんだけど……その下にあるものなんて誰も分かんないだろうし……。

結局俺はネクタイを結ぶことは諦めてブレザーを脱ぎ、校章が刺繍してある紺色のセーターを着た。

シャツは第一ボタンだけ開けてみたけどやっぱり落ち着かない。
……いや、気にしたら終わりだ。うん。

そう自分に言い聞かせ、カメラを片手に部屋を出た。