3 見学

3/12
前へ
/95ページ
次へ
そして、部屋の鍵をしめて始めて気付いたことが。 ドアの横に同室人の名前書いてあんじゃん!! 普通にネームプレートあったわ! 入るとき全然気にしてなかった……! 自分の注意力不足を恨みながら、ネームプレートに書いてある名前を確認する。 【海老沢 司】 海老沢司(えびさわ つかさ)、かな? 随分珍しい名字だな……海老沢くんね、海老沢くん。 よし覚えた。 同室人の名前問題も解決したことだし、これで心おきなく部活見学に行ける。 夏の陽はまだ傾かない。 真新しくてパリッとした制服に違和感を感じながらも、俺は寮を出た。 「おー、やってるやってる!」 サッカー部、野球部、あっちに見えるのは陸上部、外周を走っているのは何部だろうか。 どの部活も、初心者の俺ですら分かるくらいレベルの高い練習をしている校庭。 気合いの入った掛け声がビリビリ響いている。 でもどこか楽しそうな、いい表情を浮かべた生徒たち。 青春って感じだよなぁ。 俺には無縁なタイプの青春だけど。 勝ち負けとか、汗と涙と血が滲む、とか……そういうドロ臭い青春は体感したくない。 見てるだけで十分だ。 それに! 今見たいのはこういうありきたりな部活じゃないんだよね! 目指すは弓道部が活動している弓道場。 普通の体育館に加え、弓道場、武道場、学園の敷地外にはテニスコートやプールなんかの施設があるらしい。 ……テニスと水泳……。 テニスの王子的な感じも、フリーしか泳がない感じも腐敗臭の塊だから……あんまり見たいとは思わない……。 どれもこれも姉貴の薄い本のせいだ。うん。 姉貴は「ちゃんと写真撮ってこい」って言ってたから、そのうち見に行くけど。 特に気が進まないツートップは後回しだ。
/95ページ

最初のコメントを投稿しよう!

89人が本棚に入れています
本棚に追加