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体育館の裏に弓道場がある。
橋本副会長に教えてもらったからそれはわかってるし、体育館には辿り着けた。
けど体育館らしき物が2つ……どっちの体育館の裏なのか。
そもそも体育館の“裏”ってどこ?
うろうろしてても怪しいし、誰かに訊くか。
片方の体育館ではバスケ部が練習しているみたいだ。
冷たい金属の扉の向こうから、怒鳴るような掛け声やボールの弾む音、床とバッシュが擦れる音が聞こえる。
先生だと訊きやすいんだけど、偶然出てきてくれたりしないかな。
入ってみるしかないか。
そう思いながら扉の前で悩んでいると、内側から扉が開かれた。
ナイスタイミングすぎて一瞬身体が強張る。
現れたのは、いかにも「今まで運動してました」という感じで汗だくの、超絶男前な男子。
「おー、どしたん?
バスケ部になんか用か?」
無造作に掻き上げられた黒髪に切れ長な瞳、爽やかで感じのいい微笑み。
そのイケメンさを打ち消すはずのアイテム、真っ赤なダサいジャージとありがちな半袖Tシャツですら着こなして爽やかさを演出している。
しかもこのイントネーション、関西人……!
なんだこの人は……っ?!
『雰囲気、体格、この状況から察するにバスケ部エース的存在!
頼れる存在という王道ステータスに、更に関西弁による萌えの掛け算が発動!
これぞパーフェクト攻め……!
だがしかし!
あえて押し倒してそのパーフェクトさを崩していきたい、そうしたいッッ!!』
静まれ、脳内の姉貴!
何も言葉を発しない俺に首傾げてるじゃないか……!
「あのっ、弓道場ってどこですか?」
「弓道場?
なんやお前、迷子か」
「まぁ、はい……」
迷子というほど迷ってはいないけど、とりあえず頷いておく。
すると超絶イケメンさんは「ちょっと待っとき」と言って体育館の中へと戻って行った。
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