3 見学

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「おーい、三谷! 俺そろそろ抜けるわ、迷子送り届けてくるし」 「迷子ぉ? まだおせっかい会長やってんのかよ」 「別にええやろー」 開けっぱなしの扉の向こうから聞こえる、話し声。 しばらくすると超絶イケメンさんが長袖のジャージを手にして戻ってきた。 「ほな行こか! 弓道場まで案内したるわ」 「あ、ありがとうございます」 ……イケメンから笑顔を向けられると男でも「うぐっ」てなるんだな、「うぐっ」て。 しかもわざわざ案内してくれるって、超親切。 男として完璧かよ。 しみじみとそう思いながら、歩き始めた超絶イケメンさんの後を追う。 隣に並んでみて改めて気付いたけど、この人身長高いしスタイル良い。 「お前転入生やろ、この学園入り組んでてホンマ勘弁してほしいよなぁ」 「はい…………って、え? なんで転入生って分かったんですか?」 「さぁ? なんでやろ」 なんか話をかわされた気がする。 なんとなくモヤッとしながらも、聞き流しておく。 実は俺が転入生だって元から知ってたとか……いや、ただ勘が当たっただけかな。 その後は特に何の会話もなく、超絶イケメンさんの後についていった。 会話がないといっても、重苦しい沈黙が流れたとかそういうわけではなくて。 「あれ?荒神先輩もう帰っちゃうんスか?」 「おう、あんまり長居してもアレやしな。 次の試合頑張りや」 「先輩、もう一試合やっていってくださいよー!」 「何試合やらせる気やねんお前ら! 俺でもさすがに疲れるっちゅーの!」 「疲れるとか言って全然息あがってないじゃないですかぁー」 「やかましいわ、はよ練習戻れっ」 見ての通り俺以外の……体育館のドアや窓を開けて見送る後輩たちとの会話に忙しいからだ。 超絶イケメンさんを「荒神(こうじん)先輩」と呼び嬉々として声をかける後輩たちと、上機嫌そうに答える彼。 すげぇ和気あいあいとしてる……。
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