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「お前さぁ……、そうやってぶつぶつ言いながら本読むのやめろ」
「え、なんで」
「聞いてて純粋にキモいから」
キモいってひどい言い種だなー。
しょうがないじゃん、感想が口に出ちゃうもんなんだよ。
しかも駄作ならなおさら批評したくなるし。
と、そんなこと言ったらまた「意味がわからんキモい」とか言われるだろうから、俺は静かに本を閉じた。
こんにちは、どこにでもいるような凡人の菅井透真(すがい とうま)です。
いきなりですが俺は今、非凡な生活へと向かうタクシーに、気心知れた友人と共に乗っています。
うん、我ながら意味が分からない説明だと思う。
「なんか、こんなアホな会話してるとお前が転校とか実感ないわ」
「まぁ確かにね……、転校かぁ」
「他人事みたいに言うなよ」
「だって本当に実感ないし」
隣で笑う雅紀(まさき)の言うように、俺は今の状況を他人事のようにしか考えられないでいる。
高校1年の7月に、転校。
何の比喩でもなく、地元の公立高校に入学したのがついこの間の話なんだけど。
聞いたことも見たこともない、実家からは遠く離れた場所にある私立高校に転校。
しかも噂によればその私立高校は、大財閥のお坊っちゃまや一芸に秀でた生徒などなど、個性の強いヤツらばかりが集まる名門(?)男子校らしく。
事前にパンフレットにも目を通したが、まぁ規模や設備や授業内容からして非凡にもほどがある高校だ。
何故そんなところに俺が転校することになったのか。
理由は分からないでもないけど……(というか、思い当たる節はあるけど)、非現実的すぎてまともに受け入れられてない。
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