3 見学

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「写真って撮ってもいいですか?」 「写真? 別にいいけど……何かに使うの?」 「使うっていうか、えーと」 「姉の描くBLマンガの資料として使われるかもしれません」なんて言えるか?! 死んでも言えねぇよ……! 何て言えばいいんだ?! 不自然に黙ったままの俺に、部長さんは首を傾げた。 「SNSに投稿したりするんだったら、ちょっとアウトなんだけど」 「あっ、そういうのはないです!」 「それならいいよー」 「! ありがとうございますっ」 よ、良かったぁぁ、余計なことを口走らずに済んだ……! これで安心して写真が撮れる。 手にしたデジカメの電源を入れて構えた。 デジカメ越しで見ると、弓道ってなおさら絵になるな。 弓を構える部員達にピントを合わせてシャッターを切れば、控えめな電子音が響く。 上半身のアップ、あと足元までの立ち絵は撮っておいた方がいいか。 あとは建物と道具と……。 何度もシャッターを切っているうちに、またあの破裂音が聞こえてきた。 あれは矢が的に当たる音なのか。 「なんや熱心に写真撮るなぁ、転入生くん」 「写真部志望だったかー」 「いや、なんと言うか、あはは……」 出来ればそこはツッコまないでほしいんですがね。 心の中でそう呟きながら2人に苦笑いを返すと、どこかで「部長!」と呼ぶ声が上がった。 「どうした」 「次の大会の順番なんですけど、やっぱり……」 部長さんも部活中だもんな、忙しそう。 部員達の方へと引っ張られて行ってしまった。 大会近かったりすんのかなー。 真剣な表情で何やら部員達と話している部長さんも写真に納める。 これもまた青春だな。
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