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そして何故かアイマスクで目隠しされて、荷物のように軽々と黒岡先輩の肩に担がれた。
「ちょっ、待っ……?!」
「よかったな、ここの鍵壊れてて」
「そうですねー。
さすがにコレ担いで窓から出るのはキツいですから」
恐らく弓道場に出るのとは別方向にあるドアから外に出た、んだと思う。
何も見えないから分かるはずもねーよ!
アイマスク外そうにも雑に担がれてて腕の自由がきかないし。
めっちゃくちゃ揺れるから移動してることはかろうじて分かるけど!
はい、これで理不尽な回想終わり!
本気で理不尽すぎる!
* * *
それで、今に至るわけなんだけど。
「あんまり騒ぐな、すぐ着く」
「ひぃぃ……」
感情の起伏が感じられない声でそう言って、子供をあやすかのように俺の背中を叩く黒岡先輩。
だから、着くってどこに?!
いや、黒岡先輩がいる時点でなんとなく分かるけどさ……。
アイマスク外した時には視界にあの赤髪が、篠宮先輩がいる気がするけどさ……!
「っていうか黒岡先輩、そいつ重くないですか?
いけます?」
「いける。
軽いくらいだ」
「降ろしてくださ……」
「耳障りだから喋らないでよ」
「ひっ」
み、耳障りって……。
何度目かの懇願も一喝されてしまい、これ以上は何を言っても無駄だと悟って押し黙った。
今は耳から入る情報だけが頼りだけど……聞こえるのは2人の会話と足音だけ。
えーと、弓道場から出たんだから……今どの辺りにいるんだろう。
見当もつかない。
地味に揺れるから酔いそうなんだけど。
もうどこでもいいから早めに降ろしてもらいたい。
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