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「なんだよ愛斗、今日機嫌悪いな。
菅井くんがビビってんじゃねーかよ」
「ウザいんで僕に向かって喋らないでください」
「うわー!
お前ほんっとに可愛くねぇー!」
「可愛くなくて結構です」
ビクビクしながら椅子に座る俺をよそに、軽快に言い合う2人。
ぴったりとくっつけた両膝、その上に揃えて置かれた手は心なしか汗ばんでいる。
あ、そういえば俺土足じゃん……っていうか全員土足かよ。
「もういいし!
可愛くない後輩はほっといて菅井くんと話すからー!
なぁ?菅井くん」
「っえ」
「なぁ?」って何に対しての同意を求めてるの、この人?!
もういいのはこっちだよ、話したいことなんて1つもないっつーの……!
と、心の中で思っていても口に出せるわけもなく。
俺は引きつった笑みを浮かべることしか出来なかった。
それを同意と受け取ったのか何なのか、篠宮先輩はニコニコしながら椅子の背もたれから身体を起こした。
そのせいでぐっと顔の距離が近くなる。
俺は無意識のうちに、逃げるように背をのけ反らせていた。
この人、他人と話す距離がやたらと近くないか?
「菅井くんさぁ、美術部に入るって言ってたのに何してたの?
校内広いから迷っちゃった?」
「……いや、あの、別に迷っ……てはいないというか……」
美術部なんかに行くつもりもなかったというか、今日の目的は弓道部だったというか。
「茜……、迷うも何も、部室を知ってるヤツは少ないぞ」
「あ、そっか。
生徒会すら知らねぇし来れるわけなかったな、ごめんごめん!
こっちから迎えに行けば良かった……っていうか、どっちにしろこうやって迎えに行っちゃったし、結果オーライじゃね?!
さっすが俺だわ」
…………ちょっと待て。
なんだこの人。
ものすごく、ものすごーく馬鹿で能天気なにおいがするんだけど。
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