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言った、言ってやった。 言ってしまった……! さぁ、キレて殴られるのか、さらに脅されるか……。 もう覚悟は決めた、どうとでもなれっ。 「やっぱり? だよねぇ、普通そうだよね」 ……は? 「はっきり断る子は珍しいなー、な?てっちゃん」 「早々に泣き出して頷くか、逃げ出すかだったな……愛斗以外」 「だよなぁ。 はっきり言ってくれて嬉しいっちゃ嬉しいけど、残念だよ」 え、あれ? なんかもっと、こう、キツい言葉が飛んでくるかと思ったんだけど。 この展開は予想外。 篠宮先輩はまた背もたれにだらりと身体を預け、「ざんねーん」と気の抜けたら声で呟き、天井を仰いだ。 無造作にかき上げられた赤髪が揺れる。 もしかして、これで終わり? もう解放してもらえたり……! さっきまでとはうって変わって、僅かな期待がじわじわと膨らんでくる。 「あのっ、もう話は終わりでいいですか? この辺で俺は失礼しま」 「買った」 「す……、え?」 買った?え、何? 「あー、でも今は現金持ってないから無理だな。 明日以降でいい? 100万程度ならなーんの問題もなく出せるよ、うん!」 「篠宮先輩! アンタはまた金に頼る……!」 「うるさい! 金で済むなら早い話だろ! 俺は菅井くんに入部してほしいのーーーーー!!」 意味が分からない。 ただ、目の前で足をばたつかせている篠宮先輩が、欲しいオモチャの前で寝転がって駄々をこねる幼稚園児に見えることだけは確かだ。 待って、待ってくれ……なんだこれ。
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