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え、もしかしてこの人『金払うから美術部に入部しろ』って言ってんの? なにそれ怖っ。 たかが部活ごときで金払うとか怪しすぎだろ。 しかも100万とか言ってなかったか……? なんだよその大金、どこから出てくんの……なおさら怖いんだけど。 「本人は入部しないって言ってるんですよ?! それなのに金の話持ち出すなんて!」 「なんとでも言え! 俺は菅井くんが気に入ったんだよ、異論は認めねぇ!」 「アンタは本当に……っ!」 「バカで結構ですぅー!」 激昂する少年を尻目に、篠宮先輩は椅子から立ち上がってズカズカと俺に歩み寄ってきた。 しかも床に跪き、俺の手を両手でガッシリ握り締める始末。 イケメンなことも相まって、躊躇いのないその動作はどこぞの国の王子様のように見えなくもないんだけど。 「菅井くん、美術部に入部してよ! 絶対に損はさせないからっ」 ……言ってることが『僕と契約して魔法少女になってよ!』のあの白い悪魔を彷彿とさせる……。 胡散臭いを通り越してドス黒い何かを感じずにはいられない。 「や、あの、……嫌です」 「なんでぇぇぇ?! 美術部おいでよ、楽しいよ! お金払うよ!?」 「遠慮します……」 怯えながらもハッキリと首を横に振ると、篠宮先輩は下唇を噛み締めながら「ぐぬぬぬっ」と変な声で呻いた。 なんかこの人、ものすごく怪しいけど怖くはない、かも? 見た目はただのヤンキーだけどオラオラしてるような感じもないし。 でも怪しいことには変わりないんだよなぁ……! 「ほらほら、転入生めっちゃ引いてるじゃないですか!」 「俺はめげないっ!!」 「めげろよ!」 全く諦める様子のない篠宮先輩に、少年は「あーもう!」と淡い色の髪をガシガシと乱暴に掻き乱した。
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