4 勧誘

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なにそれ……? それってどれだ、どういうことだ。 少年も意味が分からなかったらしく「はぁ?」と呟いて眉を寄せた。 俺の顔になんかついてたのか? 仮にそうだとしても、篠宮先輩の纏う空気がおかしい。 また恐怖にも似た緊張感が頭をもたげてきたその時。 俺の手を包んでいた篠宮先輩の手が離れたかと思えば、スッと立ち上がって…… 「これ、なに?」 俺の首の辺りを指差した。 ……首。 「これだよ、これ」 一歩近付いた篠宮先輩の指先が、俺のワイシャツの襟を引っ張った。 わずかに晒される首筋。 正確に言えば―――――絆創膏が貼られた、あの場所。 ……え、え……ぅええぇぇえ?!! なにって?これが何って?! 何故そんなことをお聞きになるのでしょうかこの人は?! 絆創膏の下にあるものを、それがつけられた瞬間のことを一気に思い出してぶわっと顔が熱くなるのを感じた。 俺は反射的に手でそこを隠した。 それはもうバチンッ!と音がするくらい、ビンタのごとき勢いで。 「……なぁんで隠すの?」 「ぇあっ?!別に! これといった意味はないです!」 「じゃあ、なんでちょっと赤くなってんの?」 「気のせいではないでしょうか……!」 表情の抜け落ちた顔で俺を見下ろす篠宮先輩がやけに怖くて、無意味に声が大きくなる。 目を合わせていられなくて首筋を隠したまま床に視線を落とす。 すると襟を掴んでいた指先が、首筋を押さえる俺の手をつぅっ、となぞった。 「この手、退かしてくんないかなぁ」 問い掛けるように言っておきながらも、篠宮先輩は容赦なく俺の手を掴んで引き剥がした。
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