89人が本棚に入れています
本棚に追加
やけにデカくて重厚な校門前にはバス停があって、タクシーはそこに停車した。
「外部の車はここまでしか入れないので、ここでお待ちしてますね」
「はい、わざわざスミマセン」
「いえいえ~」
行儀よく運転手さんに挨拶する雅紀をよそに、俺はさっさとタクシーから降りて校門を見上げた。
まぁまぁ、無駄にデカくて豪華だこと。
雨で所々塗装が落ちて古びている様子も、なんだか由緒ありげな感じに見える。
……で、えーと……まず何をするんだっけ?
あ、そうだ。
写真撮れって言われてるんだった。
肩から下げたバッグのポケットからデジカメを取り出していると、「何してんの」と言いながら雅紀がタクシーから降りてきた。
「記念撮影」
「……お前そんなことするやつだっけ」
「うるっさいわ。
いいから雅紀、そこに立って」
「なんで俺まで撮ろうとしてるんだよ」
だって、ねぇ?
比較対象がないと、写真撮っても大きさが分からないじゃない。
って姉貴が言ってた。
とにかく嫌がる雅紀を無理やり校門前に立たせて、数歩下がってからカメラを覗く。
棒立ちしたままなのに絵になるのは背景が良いからか、モデルが良いからか……両方だな。
黒髪に短髪なせいか無駄に爽やかだし、顔もいわゆるイケメンなんだろうと思う。
俺より身長高いし……いや、別に羨ましくはないけど。
あと、少しつり気味な目を細めて笑うのが猫っぽいなー、と密かに思ってたりする。
今は猫どころか真顔で突っ立ってる雅紀を心の中で笑いつつ、シャッターをきった。
うん、校門の雰囲気もちゃんと撮れてるな。
上出来。
最初のコメントを投稿しよう!