1 転校

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やけにデカくて重厚な校門前にはバス停があって、タクシーはそこに停車した。 「外部の車はここまでしか入れないので、ここでお待ちしてますね」 「はい、わざわざスミマセン」 「いえいえ~」 行儀よく運転手さんに挨拶する雅紀をよそに、俺はさっさとタクシーから降りて校門を見上げた。 まぁまぁ、無駄にデカくて豪華だこと。 雨で所々塗装が落ちて古びている様子も、なんだか由緒ありげな感じに見える。 ……で、えーと……まず何をするんだっけ? あ、そうだ。 写真撮れって言われてるんだった。 肩から下げたバッグのポケットからデジカメを取り出していると、「何してんの」と言いながら雅紀がタクシーから降りてきた。 「記念撮影」 「……お前そんなことするやつだっけ」 「うるっさいわ。 いいから雅紀、そこに立って」 「なんで俺まで撮ろうとしてるんだよ」 だって、ねぇ? 比較対象がないと、写真撮っても大きさが分からないじゃない。 って姉貴が言ってた。 とにかく嫌がる雅紀を無理やり校門前に立たせて、数歩下がってからカメラを覗く。 棒立ちしたままなのに絵になるのは背景が良いからか、モデルが良いからか……両方だな。 黒髪に短髪なせいか無駄に爽やかだし、顔もいわゆるイケメンなんだろうと思う。 俺より身長高いし……いや、別に羨ましくはないけど。 あと、少しつり気味な目を細めて笑うのが猫っぽいなー、と密かに思ってたりする。 今は猫どころか真顔で突っ立ってる雅紀を心の中で笑いつつ、シャッターをきった。 うん、校門の雰囲気もちゃんと撮れてるな。 上出来。
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