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まるで鍵が開くのを待っていたかのようなタイミングで、幾人もの人影が窓の向こうに現れる。 大人数の足音ってなんでこんなに焦りや恐怖を煽るのか。 ガラス越しでも室内に響くほどの大声で、誰かが「見つけたぞ!」と叫んだ。 「うるっせぇし多いなー。 飼い犬総動員なんじゃねぇの?」 篠宮先輩のどこか楽しげなそのセリフに、“犬”という言葉が彼らを指す比喩だということをなんとなく理解した。 その、犬。 窓の向こうに見える彼らはなんとまぁ……見た目が……不良。ヤンキー。一部ヤクザにすら見える。 着崩した制服はもちろん、派手な髪色やジャラジャラギラギラしたアクセサリー。 こちらを見る据わった目、鋭い視線、歪む口元。 皮膚を刺すような嫌な雰囲気。 ヘラヘラと俺に話しかけてくる赤髪ヤンキーっぽい篠宮先輩や、何考えてるのか分からなくてピアスジャラジャラな黒岡先輩とは、わけが違う。 この人達……篠宮先輩の言葉を借りるなら、この犬達は。 本当に、ヤバいヤツらだ。 もうガチで死亡フラグなんじゃないのぉぉお?!! 俺もう詰んだ!詰んだね!! 転校初日で詰んだわ!! リンチされてカツアゲされてこの学校の底辺まで引きずり下ろされるんだ……詰んだ……終わった。 冷や汗なのか何なのかよく分からない汗が滲む頭を抱え、絶望の淵で震えていると。 ガラリ、とドアが開けられる音がした。 「やっほー美術部、ご機嫌いかが?」 今この場に流れる空気には似つかわしくない、高く甘く響く声と間延びした緩い口調。 「ご機嫌良いように見えんのかよ」 「えへへ、だよねぇ。 まぁ言いたいことはたぁくさんあるんだけどさ、とりあえず転入生くん返してくれないかなぁ?」 「やだね」 「うはー、言うと思った!」 クスクスと笑う声がまるで女の子みたいだった。
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