89人が本棚に入れています
本棚に追加
/95ページ
顔を上げて見れば、ガラの悪すぎる男子達の中心で微笑み佇む少年。
その容貌……特にオレンジ色の夕陽を浴びてきらめく髪色に既視感を覚えたのは、そのすぐ側で不機嫌そうに口を閉ざしている少年に似ていたからだ。
愛斗、と呼ばれていた彼のさらさらとした髪よりもふわふわと柔らかく揺れる猫っ毛。
幼さの残る顔立ちは2人ともそっくりで、双子なんじゃないかと思う。
「こっちも大変だったんだよー、そっちが色々“いじって”くれたおかげで皆に探すの手伝ってもらったんだからね」
「そいつは良かったなぁ、よく躾のできた犬達で」
「ふふふ」
篠宮先輩の言葉に細められた瞳と、不意に視線がかち合った。
「あっ、転入生くん!
おいでおいで、生徒会が助けに来たよぉ」
……生徒会?
猫っ毛の少年は確かにそう言いながら、自分のブレザーの襟の部分を指差した。
そこにあるのは兵藤副会長や橋本副会長もつけていた小さなバッジ。
(轟先輩はブレザー着てなかったから知らないけど)
生徒会である証。
あ、あぁ……生徒会。
この不良軍団、もとい“犬”を率いてる可愛い顔したこの子が、生徒会。
……ま、マジか…………マジかぁぁぁ……。
色々ショック。
ショックが重なりすぎてもう何がショックか分からないくらいショック。
「怖かったでしょぉ、変なのに絡まれて大変だったねぇ」
怖かったじゃないです、現在進行形で怖いです。
君の後ろに待機してる人達が何より怖いです恐ろしいです。
「リッキーも心配してたよぉ……あ、リッキーって橋本力ね?副会長。
だからほら、おいで」
おどけた口調でそう言いながら両手を広げる少年。
助けに来たとか、おいで、って言われても……。
さっきまで一刻も早く逃げ出したかったこの教室、だけど今は出来ることならここから出たくない。
面白いくらい身体が動かなかった。
最初のコメントを投稿しよう!