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「こんな不祥事を起こすようなクソ生徒会に、菅井くんを任せるわけにはいかねぇぜ!」
ドヤ顔してる篠宮先輩の手を振り払って、慌てて首筋を隠す。
いや、隠してももう遅いのは分かってるけど、分かってるけどね!
平然としてられるか!
ついでに腰に回された腕も振りほどこうとしたけど、何故かガッシリとホールドされてる。
くそぉ、何が悲しくて野郎とくっついてなきゃなんないんだよっ。
せめてもの抵抗で篠宮先輩から離れるべく足を踏ん張っていると、猫っ毛の少年が小さく溜め息を吐いた。
「あー、うん。
きょーちゃんから聞いたし知ってるー。
っていうかその程度で不祥事なんて言われてもねぇー……」
「不祥事は不祥事だろうが」
「たぁーくさん不祥事起こしちゃってる“自称”美術部さん達には言われたくないなぁ」
「…………」
わざとらしく“自称”という所を強調した言い方と、悪意があるのか無いのか分からない満面の笑顔。
チッ、という鋭い舌打ちが聞こえた。
篠宮先輩から聞こえてきた気がするけど、不機嫌そうに沈黙を保っていた少年から聞こえたような気もした。
「じゃあ、もっと不祥事起こしてやろうか」
襟を掴んでいた俺の手ごと引っ張られ、何事かと思う暇もなく首筋に生温かい感触がした。
より一層近くに感じる篠宮先輩の息遣い。
う、え、ちょっと……まさか。
まさかまさか、まさか。
「ちょ、何して……っあ!?」
皮膚をきつく吸い上げる感覚と音がやけに鮮明で、抗議の声が裏返る。
周りにいる全員が目を見開くのが分かった。
待ってぇぇぇ!!
本当に待ってコレ!!
俺の!!首筋に!!篠宮先輩!!
「っ、ぅうわぁああ゙あ゙やめてくださ、い゙っ?!」
生温かい感触、だけど何かが薄い皮膚に食い込むような鈍い痛みが……っていうかコレどう考えても咬まれてるだろ!!
何の加減もなくめり込んでくる歯の感触に、痛いやら恥ずかしいやらで一気に全身が熱くなるのを感じた。
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