89人が本棚に入れています
本棚に追加
/95ページ
っていうか痛い!冗談抜きでいったい!
筋だか肉だか分かんないけど首筋がギチギチ言ってるし……!
涙で視界が滲んでいく。
逃げようにも逃げられない、振りほどきたくてもできない。
どうにかしなくちゃ、とは思ってもどうすればいいか考えられる余裕なんてない。
「いいい痛っ、やめてくだ、さ」
喉の奥から叫ぶようにそう言うと、咬みつく力が弱まって歯が離れていった。
え、終わった?助かった?
いや助かってはいないけど。
安堵しかけたのもほんの一瞬。
まるでダメ押しだと言わんばかりに、ジンジン痛む首筋に生温かい舌がぬるりと這って思わず「ひっ!」と情けない声が漏れた。
あ、ヤバい。もう無理、限界。
かろうじて瞼に留まっていた涙がぼろぼろ溢れていく。
「…………っ」
誰かが息を飲む気配がした。
「茜、もう」
「わーかってます」
黒岡先輩の声と篠宮先輩の声がどこか遠く聞こえる。
俺を拘束していた腕が離れて、とん、と背中を押された。
よろけるように猫っ毛の少年の方へと踏み出せば、背後で「ごめんねー、菅井くん」と呟くのが聞こえた。
「……ふふ、キョーレツだねぇ」
「今日はそっちに預けといてやるよ」
「はいはぁい」
頭の中は真っ白。
何も考えられない、何を考えればいいのか分からない。
猫っ毛の少年がするりと腕を組んで、気が付いた時にはもうあの教室の外に連れ出されていた。
「今日はひじりんもなおちゃんもいないし、何もしないであげるよぉ。
バイバーイ」
最初のコメントを投稿しよう!