89人が本棚に入れています
本棚に追加
精神的ショックと肉体的ショックのおかげでだんまりを決め込む俺に、猫っ毛の少年は笑った。
だけど話しかけることはやめずに「あ、そうだ早めに夕飯食べない?食堂案内してあげるぅ」なんて俺をズルズルと引っ張っていく。
まるで恋人にするみたいに腕を組まれているんだけど嫌悪感がないというか。
多分、見た目が女の子にも負けないくらい可愛いからだと思う。
あと行動に一切の躊躇いがなくて自然すぎるから。
俺はもう、なすがまま。
考えるのも疲れた、抵抗するのも疲れる。
心も身体も疲れきってるし何より首が痛い。
ちょっと泣いたせいで鼻水出そうだし……我ながらカッコ悪い。
「みんな捜索のお手伝い、おつかれさまぁ。
もう解散でいいよー」
「おう、了解」
「もういいのー?」
「すんなり終わったなー」
「みんなありがとうねぇ」
少年がそう声をかけて空いている方の手を振れば、ぞろぞろとついてきていた“犬”達が散っていった。
……皆見た目はアレなのに素直に言うこと聞くんだ……。
「みんなイイ人でしょー?
僕のガーディアンなの」
ガーディアン……守護者、ってこと?
随分とガラの悪い守護者だな。
「まぁ一番のガーディアンはきょーちゃんだけど!
そうだそうだ、きょーちゃんも呼んで奢ってもらおーか。
コレの責任の半分はきょーちゃんだし、ねぇ?」
少年が指差した先にあるのは、少し前はただのキスマークだったはずの……くっきり浮き出た歯形。
俺は空いてる方の手でワイシャツのボタンを一番上まで閉めた。
不自然でもいいや、まだ熱にも似た痛みをじくじくと放っているコレが隠れるなら。
もう見られたくないし指差されたくない。
それが顔に出ていたのか、少年はクスクスと笑ってスマホを取り出した。
何やら操作して電話をかけたらしく耳元に持っていく。
その途中でふと覗き見てしまった画面に、表示されていた名前は。
【轟 恭哉】
さっきから“きょーちゃん”って呼んでたのは轟先輩のことか、とぼんやり思った。
最初のコメントを投稿しよう!