1 転校

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「記念撮影ならお前が写るべきなんじゃねーの?」 「そういう細かいことは気にするなって」 そう言いながらデジカメの電源を切る。 まだ使うから手に持っておくか。 雅紀が文句ありげに頭をガシガシ掻いているけど気にしない。 「じゃ、職員室まで案内よろしく」 「はいはい」 いざ登校!と思って初めて気付いたけど、この門、普通に閉まってる。 いや、閉まってるのが普通だろうね。 防犯は大丈夫だしね、でも転入生まで閉め出されちゃ困るよ。 管理人さんとか警備員さんっぽい人も見当たらないし、何コレどうやって入るの? 「透真、生徒証出せ」 「生徒証?」 「そこのスキャナーにかざせば入校許可されんの。覚えとけよ」 おー、なるほど。 認証システム的な?やっぱり私立校は違うな。 制服のポケットからつい最近作られたばかりの生徒証を取り出す。 そういえば生徒証の後ろになんかバーコードみたいなのが付いてたな、このためだったのか。 雅紀に生徒証を手渡すと、手慣れた様子でスキャナーにかざして見せた。 すぐさま聞こえてくるピピッという機械音。 「んで、あそこに監視カメラあるから」 「ほぉ」 雅紀が指差した先の校門の上部には、確かに監視カメラがこちらを向いていた。 なんとなーく手を振ってみる。 「あれで撮られた映像は管理人室に送られてるんだと」 「へー……って、それを先に言えよ! 手ぇ振っちゃったじゃん、馬鹿みたいじゃん!」 「それでスキャンしたデータと映像が一致すれば門が開けられるってわけ」 「雅紀くーん?俺の話聞いてる?ん?」 「はい、生徒証返す」 いやいや、話聞けよ。 生徒証を受け取ると、校門が独りでに開き始めた。 もちろんこの馬鹿デカい校門全てが開くわけではなく、人が通れる程度に造られた小さな扉部分だけが開かれる。 あーもう、手ぇ振ったのバッチリ見られたってことですか恥ずかしい。 くつくつと笑う雅紀に思い切り肩パンしてから門をくぐった。
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