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間延びした返事をして、小鳥遊くんは素直に俺の上からどいてくれた。
はしごをギシギシと軋ませながら2段ベッドから降りていくライトブラウンの頭を見送る。
開けた視界に映るのは、昨日寝る直前となんら変わりない寮の部屋。
同室の人……はいないのかな。
とにかく俺もはしごを降りて、ペタリと床を踏み締めた。
「とーまくん、さっきケータイ鳴ってたよー?
メールじゃないかなぁ、はい」
テーブルの上に置いてあったガラケーをわざわざ手渡してくれる小鳥遊くん。
そうそう、メール来てたんだった……じゃなくて!
それよりも先に聞くことあるだろ。
流されるところだったわ。
「あのー、小鳥遊くん?
なんでここにいるの……?」
疑問をそのまま投げ掛けると、小鳥遊くんは不思議そうに目を丸くして首を傾げた。
「んー?
とーまくん起こしに来たんだよぉ」
「いや、目的じゃなくて……」
「どうやって入ったかってことぉ?
寮監の先生にね、合鍵借りたのー」
「ほら」と彼は自分のポケットから鍵を取り出して見せた。
まさかの合鍵。
こんな簡単に生徒に合鍵貸していいのかよ先生。
「とーまくん、今日から本格的に登校でしょー?
昨日も変な人達に絡まれちゃったしさぁ……学校に慣れるまではなるべく近くでサポートしてあげた方がいいよねぇ、って話になってね?」
ヤバい、なんか大事っぽいこと話し始めたぞ。
まだハッキリと起床してくれない頭をどうにか回して、小さく頷きつつ小鳥遊くんの話に耳を傾ける。
「2週間だけとーまくんのクラスに編入することになったからぁ、僕が」
「編入?
え、わざわざ?」
「そー、わざわざ!
だから今日から一緒に登校しよーね」
いや、何が「だから」なのか分からないけども。
転入生のために生徒会役員がクラス編入って……それ必要なのか?
普通はそのクラスのやつがなんか、こう、上手くサポートしたりするもんじゃないの?
まぁ、そもそも“普通”がどうだか知らないけど……だって転校初めてだし……。
生徒会って大変なんだな。
なんか申し訳ない。
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