5 紛失

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「分かったけど、えーっと……もう登校するの?」 そう言いながら、時間を確かめるためにガラケーを開けて画面を見る。 メールが来ている表示も出てるけど今はとりあえず無視。 ……7時ちょい過ぎだ。 「いや、さすがにまだ登校はしないよぉ。 僕はいいけど、とーまくん起きたばっかりだし。 朝ご飯も食べなきゃでしょー? とーまくん、食堂の場所分かんないだろうし、一緒に行こ?」 朝ご飯。食堂。 ご飯ワードを聞いた瞬間に腹が減ったような気がする……これぞ人体の不思議。 俺は即座に頷いた。 「じゃあ、食堂行こう。 案内お願いします」 「うん!」 やたら嬉しそうに頷く小鳥遊くん。 早く行こうと言わんばかりに部屋の出口に向かう背中を見て、忘れていた大事なことを思い出した。 自分でもちょっと苦しいくらいにびっちり上まで閉められた襟元。 「……あ゙っ」 …………まぁ、…………はい、昨日の云々は、……置いといて。 シャワーだけは浴びたい。 色々と洗い流したい。 「ちょっとごめん小鳥遊くん、シャワーだけ浴びたいんだけど」 「ふぇ? シャワー?」 「昨日なんにもしないで即寝たから風呂入ってなくてさ、あは、は」 今のは別に笑うところじゃなかっただろうとは思うけど、自分でもよく分からない笑いが漏れた。 「そうなのー? じゃあ僕待ってるから、ごゆっくりどーぞ」 「ありがとう、っていうかなんかごめん……」 「いいよぉ、時間余裕あるもん。 だいじょーぶ」 小鳥遊くには適当に座っててもらって、俺は下着やらタオルやらを引っ掴んでバタバタとバスルームに駆け込んだ。 いくら時間に余裕あるからって待たせるのは気が引けるし、これ以上生徒会役員さんに迷惑かけるにはいかない。 急がねば。 あと単純に腹減った。早く食堂行きたい。  * * *
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