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とりあえず俺は洗面台の前でYシャツのボタンを外して、見たくない現実を直視した。
赤いを通り越して、紫とも赤黒いとも言い難い色になった首筋。
……もうやだ……なんかグロい色してる。
内出血どころの騒ぎじゃないだろ。
朝からテンション下がるっていうか……これ消えんの……?
いつまでも絶望してるわけにもいかないし、とにかくさっさとシャワーを浴びて制服を着直した。
濡れた髪もそのままに部屋に戻れば、スマホを片手にフローリングに寝そべる小鳥遊くんが視界に入った。
なにそのくつろぎ方。
ここは自分の部屋か。
「おわー、早いね!
もっとゆっくりでもよかったのにー」
「いや、待たせるわけにもいかないし」
「別にいいよぉ。
髪も乾かしてないじゃん、ドライヤーはぁ?」
「持ってきてない……」
ドライヤーなんて無くてもそれほど困らないし、荷物かさばるし。
「同じ部屋の人のは?」
そう言うと、俺と入れ違いになるように小鳥遊くんは洗面所に入っていく。
洗面台周りをごそごそ漁って、「あったー!」と引き出しからドライヤーを見付けてきた。
「え?!
いやいや、人のものを勝手に使うのはちょっと……!」
「えー?」
「髪なんてすぐ乾くし、ほら、夏だからっ」
「校舎は結構冷房効いてるけど。
濡れたまんまだと風邪ひいちゃうよぉ?」
「え……おぉ……」
確かに……昨日も暑さを感じないくらいには涼しかったな……。
でも、だからって人様のものを勝手に使うのはちょっと俺の常識に反するというか。
そんなに簡単に風邪ひくほどヤワじゃないと思しな。うん。
「まぁ多分大丈夫だし、ドライヤーしまってください」
「そうー?
僕がドライヤーかけてあげようと思ったのになぁ」
そんなことを呟きながら、小鳥遊くんはドライヤーを手にして洗面所に戻って行った。
なぜ君がドライヤーかける気だったんだ。
よく分からん。
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