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ドライヤーを無事元の場所に戻してきた小鳥遊くんが「じゃあ食堂行こっか!」と言った、それとほぼ同時に。
ガチャッ、とドアノブの回る音がした。
「菅井くーん、起きてるー……?」
控えめに呼び掛けるような声と一緒にドアの向こうから現れたのは、茶髪ハーフアップの同室人くんだった。
あっ、名前なんだっけな……。
俺がこの時間に起きてるとは思っていなかったのか、視線が合った瞬間に同室人くんはドアノブに手をかけたまま固まった。
なんかこの人、今日の彼の髪は昨日よりぐしゃぐしゃで疲れきった顔をしてる。
しかもヨレヨレの制服姿。
ん?
もしかして、昨夜寮に帰ってきてないんじゃ……?
「…………」
変に思考回路がズレたせいで、彼の表情が強張ったことに気付くのが少し遅れた。
あ、なんか喋んなきゃ。
「おー、おはよう。
起きてるよ」
うっすら微笑んで意味もなく手を振ったぐらいにして。
「お、おぉお……おはよ……」
えっ、なにその反応……なんで若干引き気味なの?!
この数秒で引かれるようなことしたか俺……?!
「あー…………あの、なんかごめん……な?」
「え?え?!」
「じゃあ」
パタン。
ってドア閉めてそそくさと出て行っちゃったんだけど!?
彼は何に謝っていったの?!
俺マジで何かした……?!
え、待って、勝手にドライヤー使おうとしたのが嫌だったとか……いや、多分見てないし有り得ないか。
それなら謝るのはこっちだろ。
どうしよう、全然わからない。
全然わからないけど同室人くんとの人間関係の構築に失敗した気がする……!
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