6 朝食

3/5
前へ
/95ページ
次へ
「おはようございます……」 関わりたくなくても一応挨拶はするよ、人として常識だし。 だけど何されるか分かんないから、ある程度は距離をとったまま。 いや、「何されるか分かんない」とか考えてる時点で色々とおかしいんだけどな! 昨日の首筋のアレでもう、轟先輩への信頼はゼロどころかマイナスだから仕方ない。 「転入生くんの名前なんだっけ、忘れた」 「とーまくんだよぉ」 「とーまくん?」 「いや、まぁ、透真ですけど……菅井です」 「ハイハイ、とーまくんね」 なるほど、話聞いてくれないんですね! なんとなくそんな気はしてた、うん。 とーまくん呼びが定着しそうだな……別に嫌ではないけど良くもないというか。 「立ってんのダルいし、さっさと飯食おうぜとーまくん」 そう言って盛大にあくびをしたかと思えば、轟先輩はなんの躊躇もなく俺の肩に手を回した。 思わず一瞬身体が硬直する。 「ぅえっ、あの」 「なに?」 「……なんでもないッス」 左腕には小鳥遊くんがまとわりつき、右側からは轟先輩が寄りかかってくるという謎フォーメーションが出来上がってしまった。 もんのすごく馴れ馴れしくないですか。 どうなってんの、この人達のパーソナルスペースどこいったの。 でも轟先輩は別に変なこと(そもそも変なことって何だよ)をしてくる気配もなく、「恋斗はなに食うの」と小鳥遊くんに問いかけている。 俺を挟んで会話する必要なくない……? 「僕はどうしよっかなぁ……あ、とーまくんに注文の仕方とか教えてあげなきゃね!」 「教えるも何もなくねぇ? 食券買っておばちゃんに渡すだけだし」 「えー、ちゃんと教えることあるよぉ」 あ、はい、食券制なんですね。 なんかもう色々とどうでもいいや。 今はとにかく朝ごはん。早く食べたい。  
/95ページ

最初のコメントを投稿しよう!

89人が本棚に入れています
本棚に追加