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その木が 花を付けなくなって、どれ程の時が流れただろう。
邸の軒(ノキ)よりも高く聳(ソビ)える桜の枯木(コボク)。
「大きゅうなりましたなぁ…」
傍らに座る女が ポツリと呟いたのは…
今は其処に “在るだけ” の存在になってしまった枯木ではなく…
その隣で青々と茂る若木の桜。
「そうだな…
あのコも 此処数年、見事な花を付けるようになった。」
そう…
在りし日の あのヒトの様に
壮麗で
儚き
見事な花を…
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