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桜舞う春の夜
古い桜の大木に凭れ眠る姫君は…
消えてしまいそうな程儚げだった。
「この様な所で眠っていたら 風邪を引いてしまいますぞ、桜花(オウカ)の君?」
「…ぁ…月代(ツキシロ)の君ぃ…」
寝ぼけ眼で ふにゃり、と微笑む愛らしい姫の名を……私は 知らない。
同じ様に、彼女も私の名を知らない…
だが、
それで良かった。
名など、どうでも良かったのだ。
只、目の前の彼女の存在だけが全てだったから…
春だけ…
この桜の花が咲く時期にだけ逢える…
私の愛しい人
あの時は、ソレだけで良かった…
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