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「分かっているのですか…?
貴女は身体が弱くていらっしゃるのですよ。
春先のほんの短い間しか、都で過ごせないのでしょう。また、薬師(クスシ)殿に叱られてしまいますよ?」
年に数日しか会えないからこそ…
無理をしないで欲しいのに…
不安にさせないで欲しいのに…
貴女は、本当に自由な方だから
「ならば、貴女が温めて下さい……月代の君。」
私は いつも貴女に振り回されてしまうのです。
「フッ…本当に仕方の無い方だ。しっかり掴まっていて下さいね。」
「えぇ…」
ピタリと胸に吸い付く身体を抱え上げ、邸の中へと歩き出す。
「…今年も…」
「…ん?」
「今年も、見事な花を咲かせて……本当に良かった…」
「そうですね。貴女は この桜がお気に入りですから……良かったですよ、桜花の君。」
「ふふっ…」
微笑んだ桜花の君の笑顔が…何処か寂しそうに見る。
時折見せる この笑みが私の不安を掻き立てるのだった…
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