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ピッピッピッピッピッ…
規則正しい音を繰り返す機械音が、オンボロなアパートの一室に響き渡る
その音に反応した有島 若葉 27歳は顔を歪めながら、目覚まし時計となる携帯を手探りで探した
枕元にある筈のそれは一向に手に当たる事は無く、然し別の何かが指先に触れてベットの下へと落ちた
「…………」
尚も鳴り続ける目覚ましに、若葉は不機嫌な顔で起き上がり、携帯を手にとってアラームを停める
シーンと静まり返った寝室で、彼女は眉の上辺りの痛みに息を吐いた
真っ赤に腫れた瞼は普段よりも視界を阻め、気持ちを落胆させる
(…そう言えばさっき、何か落としたっけ…)
ベットの上で呆けた顔でそう思い出し、顔を床に覗かせた、その時だった
――ガッタン!!!
椅子が倒れた音が寝室の前の台所から轟き、若葉の頭の痛みを膨らませた
「…何やってんだっつーの…」
床を覗き込んでいた目的を忘れ、額を抑えた彼女は立ち上がり、寝室の硝子戸を引く
そして台所のフローリングに転がる椅子と、転倒したであろう足の指をキュッと握るそれを見て呆れながら近寄った
「慶喜、朝からうるさ……」
「いっ…てぇ…」
倒れた人物の顔を見た若葉は、絶句した
何故ならば、フローリングに横たわるその人物は、襟足の長い髪だけを赤色に染めた高校生位の少年であったからだった
しかし彼女にその少年を特定する心当たりは無く、思わず呟いた
「…あんた、誰?」
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