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これから若葉はパートに出なければならない
しかしこの子供を置いて家を空けるのは、どうにも心配である
だからと言って休む訳にも行かない
(…てかコレ、夢なんじゃないの?
それか幻覚?
仕事から帰って来たら消えてるかも知れない)
一番納得の行く考えに辿り着いた若葉は、アルバムを眺める若き慶喜を置いて仕事の準備を始めた
泣き腫らした瞼を化粧で何とか誤魔化し、顔色の悪さを隠す為に少し濃いめにチークを付ける
顔の印象を良くした所で着替えを始めた時だった
寝室の硝子戸を遠慮なく引く耳障りな音と共に、慶喜が上半身下着だけの若葉をじっと見つめた
「ちょ…、と
出てってよ」
睨み付ける若葉は慌てて服で体を隠したが、時すでに遅し
慶喜は腕を組んで柱に凭れながら若葉に問い質した
「…その背中の傷、何?」
若葉の背には、無数の切り傷と、痛々しい根性焼きが付けられていた
それに空かさず反応した慶喜に、若葉は服で体を隠しながら戸を閉めようとするが、慶喜の手がそれを阻止した
「…俺がやったの?」
「……慶喜はそんな事しない」
無理矢理閉めた硝子戸は、柱に当たってガシャンッと音を経てた
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