卒璽―suddenly―

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若葉がパートとして働くのは、小さな喫茶店である 馴染みの客も多く、それに店長である臺野(だいの)と言う男性はとても人柄が良く、若葉の相談にも親身になって話を聞いてくれる為、然程苦労は感じない (…だからと言って、今回の件は相談するにも何だかな…) 家の状況が心配になる若葉が上の空で生ビールのディスペンサーを取り換えていると、臺野は悟った様に若葉に話しかけた 「どうしたの?若葉ちゃん」 周りを良く見ている彼は、この様な些細な動きも見逃すことがない 故に他の従業員からも支持は絶大である 改めて店長に大して関心していた若葉は、作り笑いを浮かべながら返事を返した 「…昨日、慶喜と喧嘩しちゃって」 こんな恋沙汰を良く相談する為、臺野は慶喜の存在を良く知っている そして唸りながら苦笑いを浮かべた 「あらら 何が原因だったの?」 「…また仕事をクビになったんです」 思い返して、昨夜の慶喜の悲しそうな顔が浮かんだ若葉は、ぎゅっと手を握り締めた (私があんなにキツイ事を言ったから、慶喜は…) 落ち込む若葉を見つめる臺野は、少し考えてから言った 「俺の知り合いで人手が足りないって言ってかもなあ 確か大工だったと思うけど、慶喜君も前に大工やってたよね? 知り合いに話を聞いて紹介してみようか?」 優しく微笑んだ臺野の寛大さに、思わず頷こうとした若葉だったが、今の状況を思い返してそれを留まった 今の慶喜にはそんな仕事は出来ないと踏んだからだ きっとまた揉めて辞める事になる それに何時、元の慶喜に戻るかも分からないのだ 安易には頷けなかった .
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