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明菜はボイストレーニングが終わる頃をみはらかって教室に行った。
ちょうど終わったばかりで、生徒達が帰り支度をしている。
光一は明菜の姿を見て一瞬、顔が曇った。
でもすぐに笑い顔を作り、明菜に駆け寄ってきた。
「もうすぐ終わるから、ここで少し待ってて」
そう、伝えると光一はキーボードなどを
片付け出した。
明菜は光一に会ったら、言いたい事が山ほどあった。
でもいざ光一に会ったら、言いたい事が何も無い事に愕然とした。
「お待たせ。
ちょっと明菜に聞きたい事がある。
昨日の夜は何してたんだ?」
「光一からのメールで、用事が出来て行けなくなったと言うので、まっすぐ帰ったよ」
「本当か? 俺はメールなどした覚えは無い。そのメールはあるか」
「わたし嘘などついてないわ。
メールはあるよ」
明菜はメール保存フォルダを開く。
「えっ、どうして?」
光一からのメールは無かった。
「どうだ。あったか?」
「……」
明菜が無言で首を横に振った。
「お前の事は信用出来ない。
あの日まっすぐ帰ったと、さっき言ったよな」
「うん」
「では、これはなんだ」
光一が差し出したスマホの画像を見た。
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