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光一が差し出したスマホには、男に抱き抱えられるようにして、
タクシーに乗り込む明菜の姿があった。
「これは、なんだ?」
「……」
「お前との婚約は、解消する」
「待って! 光一さん。
彼とは何でもないの。
説明させて……」
「俺はメールを送って無いのに送っただって?
そして、真っ直ぐ帰ったって……。
じゃあ、この写真はお前じゃないのか?
どこまで嘘で塗り固めるんだ!」
ヒステリックに光一は叫んだ。
スマホの写真を見せながら、ヒステリックに叫ぶ光一を見て明菜は、どんな弁解も無意味な事を悟った。
明菜は溢れて来る涙を右手で、拭いながら逃げ出すように教室を後にした。
(いつあの写真撮られたの?
どうしてメールが消えているの?
何故? 光一さんが写真持ってるの?)
明菜は、脳がフリーズしたかのように、何も考える事が出来なかった。
不可解なのは、ジャズクラブで気分が悪くなった所までは記憶があるのに、
その後の記憶がすっぽり抜け落ちている事であった。
抜け落ちた記憶を思い出そうとすると、悪夢のシーンが断片的に甦る。
私、頭が変になったのかしら……。
昨夜の事を、彼に会って聞こう。
明菜は市川から貰った名刺を見た。
名刺の裏に“何でも屋”とあった。
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