憑依の章

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早瀬光一は、悪夢のせいで寝汗をびっしょりかいた。 首や肩が、ガチガチ凝り固まっている。 濡れた下着を着替えながら、首をゆっくりと回す。 『ゴキゴキ』 と音が鳴った。 最近、同じような悪夢を見るのは何故だろう。 悪夢を見るたびに首や肩がガチガチになる。 理由が分からない。 ……何かの予兆か前兆なのか? 枕元の目覚まし時計に視線を移すと午後4時を指している。 えっ、嘘だろう……? たった2時間しか寝てないのに満ち足りた感じがする。 今日は1週間振りの本宮明菜とのデートだ。 明菜の事を思い浮かべると嫌な気分が消える。 光一は鼻歌を口ずさみながらステップを踏んだ。 明菜との出会いは六本木のジャズグラフ。 CD発売ライブをやっていた時に明菜がお客として来ていた。 彼女とは何故かフィーリングが合って 付き合いだした。かれこれ2年になる。 プロポーズしたのは去年の12月15日だった。 自分のマンションに明菜を招待。 10畳のフローリングの部屋の真ん中に 丸い硝子のテーブルを置く。 テーブルの上には明菜の好きなケーキと赤ワイン。 蝋燭をテーブルを囲むようにハートの形に合わせる。 明菜と約束した8時が刻々と迫ってくる。 光一は中腰になり5分前にすへての蝋燭に火をつけだした。 すへての蝋燭に火を点け終えて 『ふー』 と深い息を吐く。 『ピンポーン』 玄関のチャイムが鳴った。 『よし』 光一は小さく呟くと部屋の電気をパッと消した。
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