【3】

13/19
前へ
/313ページ
次へ
「えっ! 仕事で行けなくなったと言うのは、嘘だったの?」 「彼は依頼の女性を選んだので、 仕事っていうのは、嘘だったよ」 「どうして、その嘘のメールを削除するの?」  「彼女にして見れば仕事っていう口実より、何にも言わないで、すっぽかした方が本宮さんが諦めやすいだろうと判断したそうだ」  「そんなのは、その女の身勝手よ。 それで市川さんはその依頼を引き受けたの?」  「うん。 人前でキスを見せびらかす男なんて最低だ。 そんな男には関わらない方が良いと、判断したからなんだ」 「それで市川さんの行動は、指示された物だったの?」  「いや、本宮さんがメールを読んでいるいないに関わらず削除して貰いたい。方法は任せるという依頼だった」 「いくら仕事といっても、犯罪よ」 「そうだね。私の仕事には盗聴、盗撮、尾行などがあるからね。  依頼を引き受けたのは良いが、どのようにして接近するか悩んでいた時に、あのケーキ事件があった。 ツキがあるってほくそ笑んだね」 「タクシーでの写真、どのようにして撮影したの?」 「あれは、私では無い。依頼の女の関係者だろう。 その写真の話しを聞いて、巧妙に仕組まれた罠(わな)ではと思ったんだよ」 「そうだったんですか?」 「一つ質問して良いですか?」 「はい。 何でしょう?」 「彼にまだ未練はありますか?」 「いえ。 今までの話しを聞いて彼への未練は、すっかり消えました」  「それを聞いて安心しました。 私を騙したあの二人には、それ相応の報いを受けて貰いますから……」 「えっ! 報いって?」
/313ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8171人が本棚に入れています
本棚に追加