【3】

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 「私は陰陽師ですよ。 魑魅魍魎を操って、あの二人を懲らしめるんです」  「市川さんがやりたいのであれば、やっても構わないけど……。私はどちらでも構わないわ」  「そうですか。 本宮さんが、そう言うのであれば私も二人に関わるのはやめましょう」 「私のメールは、いつ削除したんですか?」  「タクシーの中ですね。 もうこの話しはやめましょう。 ところで、ジャズクラブの事は覚えていますか?」  「ええ、とても素晴らしい演奏と歌でしたね。私の好きなエリントンの曲が数曲あったので、感動してアルコールの量も進んだわ」  「そうでしたね。 終了間際には、かなり酩酊していましたよ」  「あんなに酔ったのは、産まれて初めて。 ……初めて会った人とお酒を警戒心なしで飲んだのも、いま考えてみても不思議だわ」  「そうだ、ホテル内での記憶を再現してみますか?」 「ほ、本当にそんな事が出来るの?」 「試してみますか?」 「はい」 明菜は唾をゴクリと飲み込んで言った。  「藤井さん、今日はもう終わっても構いませんよ」 「はい、終わります」  「本宮さん。では、ちょっと待って下さいね」 「はい」 二人が奥の部屋へ引っ込む。 暫くして事務員が出て来た。 「ごゆっくりどうぞ」 「……」 明菜は無言で頭を下げた。  事務員が帰ってから、すぐ奥の部屋から 市川が出て来る。 市川の姿を見て明菜はビックリした。
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