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今、降りた車両の真ん中の席で、光一が見知らぬ女性と腕を組んで、まるで恋人のように見えたからだ。
やっぱり市川さんが言ってた事は本当だった。
二人の姿を目撃するまでは明菜は半信半疑だった。
女と目線が合った。
見知らぬ女だった。
化粧がどぎつい。
女がニヤリと明菜を見て邪悪に笑う。
明菜はゾッとした感覚を覚えた。
電車がホームを離れる一瞬の出来事だったので、自分の勘違いかも知れないと明菜は思った。
明菜が時々利用する漫喫は駅前通りの雑居ビルの4階にあった。
エレベータで4階にあがり漫喫のドアを開ける。
受付には誰もいない。
呼び鈴を押す。
女性店員が、バケツに雑巾を持って小走りに来た。
会員証を出す。
「コースは如何なさいますか?」
「5時間パックをお願いします」
「はい。かしこまりました」
「あのう、もしかしたら寝ているかも知れないので、4時間30分したら起こして貰えませんか?
それからミニカルビ丼と生ビールをお願いします」
「はい。かしこまりました」
部屋の番号札は“D-8”だった。
“D-8”の個室の座敷はトイレの近くの場所にあった。
個室に入ると明菜はテレビをつけた。
昨夜の火災事故の現場がテレビに写し出された。
昨夜の火災事故の犠牲者の名前が、
敬称なしで出ていた。
『えぇ!?そ、そんな馬鹿な……どうして……』
犠牲者の名前を見ていた明菜が突然、大声で叫んだ。
犠牲者の中に本宮明菜の名前があったからだ。
(どうして自分の名前が……)
「お客さま。 どうなさいました?」
生ビールを持ってきた店員が明菜に声を掛けた。
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