【5】

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「昼間のお客のアパートは、中野と高円寺の中間位の場所だから、此処を10時頃出れば大丈夫だよ」 「わりと近い場所なんですね」 「そうなんだ。 まあ時間は、たっぷりあるから君の悩みを聞こうか? さっき外から君の姿を見た時は、ビックリしたよ」 「えっ! どうして?」 「魂の抜け殻っていう感じだったから……」 「……そんなに酷かったんですか……」 「そうだよ。 何があったんだ? それから君の用件を聞こうと思っていたら、突然に裏の仕事の依頼があって、そちらを優先してすまなかったな。 君との約束の時間は、しっかり覚えているんだが……君の用件の事に関しては……曖昧なんだよ……」 「えっ……どうして惚(とぼ)けるんですか?」 「惚けるとは、どう言う意味だ?」 市川は強い口調で呟いた。
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