【5】

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「市川さんと最初に会ったのは、私のケーキに市川さんがぶつかった時ね……」 「……何でその事を……」 「……ぶつかったのは偶然で、市川さんの目的は私のスマホからメールを削除する事だったのよね。 私はジャズクラブで酔っぱらって、市川さんに抱き抱えられタクシーに一緒に乗った。タクシーの中で私のメールを削除したのね……」 「……うーん……。本人でなければ知り得ない情報だ……。 君の言う事を信じるよ……」 「ありがとう。 私も何が何だかさっぱり分からないの」 「ところで今日事務所で君に会った時、私は何を話した?」 「えっ! 覚えていないのですか?」 「……そうなんだよ」 「市川さんは、私に 『生きていたのか?』 とおっしゃいました」 「……そんな事を言ったのか。 そうすると、それ以後、私の記憶から君の情報が消された事になる……。 もしかすると私達は、とんでもない相手と……。 君は、この件から手を引いた方が懸命かも……」 「いえ、私には何も失うものはありません。私は一人でも真相を究明します」 「分かった。私も協力しよう」 市川は、そう言うとスマホを取りだして誰かに電話している。 (……誰に電話しているんだろう)
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