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市川は電話を切ると、
「君は今日から私の妹になるんだよ」
と、真剣な眼差しで言った。
「……えぇ?……どう言う事ですか……」
目を丸くして明菜は呟いた。
「言葉の通りだよ。
本宮明菜は、この世に存在しないのだよ。
君は職場も住んでる家も両親も、全て失なった……。
財布を持っているかい?」
「……はい……」
首を傾げながら明菜は財布を市川に
渡した。
市川は明菜から財布を受け取ると、
財布の中身を調べる。
「おう、5万3千円か、意外と入っているじゃあないか……」
そう言うと財布から5万3千円を抜き取ると明菜に渡した。
「この財布と中身は全て処分するよ」
「ちょっと待って下さい……
中にはキャッシュカードも入っています」
「そうだよ。君は本宮明菜では無いから使用出来ない。スマホと部屋の鍵も処分するから渡して……」
明菜はしぶしぶとスマホと鍵を渡した。
スマホと鍵を受け取った市川は、
「よし、君は今日から妹の明菜だ。
君の住まいは落ち着くまで、事務所の奥の部屋を使用して……」
「……事務所ですか?」
「以前、事務員の藤井さんが、アパートが見つかるまで住んでた部屋が空いてるから。藤井君をさっき事務所に呼んだから今から行こうか」
「……はい」
(……これから私の人生はどうなるんだろう……)
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