【5】

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ロータリーに停めてある車の助手席に明菜は乗り込んだ。 シートベルトを締めながら、 『もう後戻りは出来ない……』 と、明菜は自分に言い聞かせた。 (……くよくよ考えても仕方ないわね。 人生なるようにしかならないから……) 「明菜で良いよね。妹なんだから……」 「……はい」 「私も責任を感じているんだよ……。 私が明菜に接触しなければ、今回の事件は起きなかったのではないかと……」 「市川さんが……」 「明菜、お兄ちゃんで良いよ……」 「……お兄ちゃんが引き受け無くても、 他の誰かが代わりをしたと思うわ」 「……そう思ってくれると気が楽になるよ。 履歴書が無いと仕事も出来ないから、私の仕事を手伝うかい?」 「はい。 何をやれば……」 「何か特技か資格は?」 「ボイストレーナーの資格を持っています。ジャズシンガーを目指していたので……」 「それは素晴らしい。 早速、カルチャーセンターに欠員を穴埋めしますという案内を出すよ」 「はい。 ありがとうございます」 「……駄目だね、他人行儀だ……」 「お兄ちゃん、ありがとう」 「……オッケイ」 「お兄ちゃん」 「なんだい?」 「……ひとつお願いがあるの……」 「……お願い?」
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