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「ボイトレの仕事の無い日や夜は、お兄ちゃんの裏の仕事を手伝って良いかなぁ……」
「……本当かい? 手伝って貰うのは嬉しいけど……皆、嫌がる仕事だよ……怨霊や死霊の世界だから……気を使わなくても良いからな」
「気を使っているんじゃあ無くて、裏の仕事に興味があるの……」
「……そうか分かった。 普通は興味があるだけじゃ採用しないが明菜は特別だ」
「お兄ちゃん。ありがとう」
「……明菜……初めて笑ったね。
明菜が本当に妹みたいに思えてきたよ」
「……だってぇ……本当に妹なんだもん」
明菜が、拗(す)ねたような口調で言った。
「そろそろ事務所に着くよ」
右前方に“なんでも屋”の看板が見える。
2階の“なんでも屋”の事務所に明かりがついていた。
「先に事務所に入って待っててくれ。
車を駐車場に入れてくるから」
明菜は車を降りた。
周りを見渡す。
歩いている人はいない。
冷たい風が明菜の長い髪を揺らす。
明菜は“なんでも屋”の入っているビルの階段の前まで来た。
(……ここに2回も同じ日に来るとは思わなかったわ)
急な階段を登って左に折れて“なんでも屋”のドアの前で明菜は少し市川を待っていた。
外は少し寒いので、明菜は“なんでも屋”のドアを開けて中に入った。
「あら、 いらっしゃい。
妹さんね。 初めまして」
「は、初めまして……」
(……どういう事? 私を覚えていないのかしら……)
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