【5】

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「こら! 待てぇ……」 バリカンを持って明菜が市川を追いかける。 「ストップ」 藤井が両手を広げて2人の間に割り込んだ。 「遊んでいる場合では無いでしょう。 仕事の時間は?」 「そう、だったな」 市川は腕時計に視線を走らせた。 「大丈夫だよ」  「所長、妹さんは私と体型が似ているから毛糸の帽子とコートは使えると思うわ。1回しか使用してないのよ」  「そうなんだよ。 最初は藤井さんは 裏の仕事希望だったんだよ」 「えっ、もしかしたら藤井さんもスキンヘッド?」  「……スキンヘッドなんかしないわよ。 元々、ショートヘアだったので、そのままだったわ」  「藤井さんは、面接の時にネットでホラー小説を書いていると言う事だったので、魑魅魍魎の類いも大丈夫だなと思っていたら……」  「所長、その後は言わないで……。 私から話すわ……。 ちょうど2年前の……そう季節は今頃だったわ」 藤井は、ブルッと身震いした。
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