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「……あぁああぁぁあぁあぁああぁぁあ……」
ワタシはビクリと振り返る。
不意に聞こえてきたそれは、遠くから聞こえる暴風のような。動物の唸り声のような。喉の奥を振動させる呻きのような。
とにかく、良く分かんない変な声。それが人の口から出ている音だなんてとても信じられない。
そんな声、いや、音が目の前の名前も知らない生徒から発されている。……何、コイツ、キモい。
「……何、アンタ。ワタシに何か用なの? もうホームルーム始まるよ」
ソイツはフラフラとワタシに近づいてくる。喉の奥が鳴ってるだけで返事はない。
白く濁った視線にワタシの姿が映っているのかも分からない。
口はだらしなく開きっぱなしで顔色もスゴく悪い。その潤いを失っているように見える肌の色は、真っ青を通り越して、もう、真っ黒に近いかも。
「……ね、ねえ、大丈夫? 気分悪いなら保健室行ったら?」
言葉ではそう言いながら、ワタシは構わずにソイツの横を通ろうとする。ソイツから漂う鼻につくイヤな臭いに思わず顔をしかめてしまいそうになるのをなんとか我慢する。
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