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ソイツらはそこら中から、まるで膿みたいに滲み出す。ワタシに向かって手を伸ばしてくる。届く距離じゃないけど思わず飛び退く。
フラフラと覚束ない足取り。ズルズルと身体を引きずるような歩き方。這いずる中には足がないヤツさえいる。
低い呻き声と腐臭がこの場一杯に充満していく。気持ち悪い不協和音に嘔吐感を催す。
思考が止まる。何が起きているのか分からない。でも、でも、
とにかく、とにかく、とにかくコイツらから逃げなきゃ!
そう思うより早く、ほとんど無意識に、本能的に身体が動いていた。
ソイツらから視線を外すことも出来なくて、後退って、そして、それでも振り返ると、そのまま駆け出す。ラッキーなことにワタシが走るそっちにはまだアイツらはいない。
動きは遅い。ソイツらが走ることはない。元陸上部ナメんな。
横の教室や階段からも不意に現れて、現れた瞬間にはワタシに向かって雪崩れ込んでくる。
指一本すら触られるのはイヤだ。全力で走りながら、伸ばされたソイツらの腕、顎が外れてしまいそうなほど開けた口から身をよじって躱し続ける。
知り合いのみんなの顔をした奴らは脆い。カバンを振り回すだけで吹き飛んで、砕けて、千切れていく。
でも、それだけ。
コイツらは動き続ける。
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