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『やめてーーーーーっ』
この後のことは、何も覚えていなかった。
気付いたら、ケンちゃんの腕の中で号泣していた。
気付いたら、高坂さんの姿はなかった。
◇
二階から聞きなれたリズムの足音が降りてくるのが聞こえてきて、私は思い出のアルバムを瞼の裏で一旦閉じると、ゆっくりと目を開けた。
ストライプ柄のパジャマ姿の彼が、あり得ない方向に寝癖を立てて、寝ぼけ眼でリビングへやってくる。
「おはよ」
からからに乾いた声でそう言いながら私の前の席に座ると、ミルクを一口飲んで喉奥に潤いを与える。
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